2008/02/03

森の生活(上)

森の生活(上)/ H.D. ソロー / 岩波書店 / 9784003230718

本を売ろうと手にとったら読んでなかった事を思い出して読んでみた本。

子供だったころ近所の林の中にちょっとした居心地のよい空間があって「よしみんなでここに暮らそう」と言った本人が暗くなるやいなや「ご飯だ」とつぶやいたそのとたん、なぜか急に怖くなってみんなで走って帰った時のことを思い出した。まだ太陽が高かった時の高揚感は夕日と一緒に沈んで、それきり拾い上げられることはなかった訳だけど、
この本の作者は、大人になってそんな気持ちを拾い上げて忘れないで大切にした人なのかもしれない。

ずっと長い間私はそんな子供の頃に抱いた自然の中にいた時の気持ちを忘れていたし、その事とこの本が頭の中で結びついたのは半分以上読んだあとだった。そのせいなのか分からないが序盤はかなり読みづらい箇所があったのも確かだ。

普段、当然のように食料売場で買い物をして食材を買ったりお金を払って外食してる。ソローは「違うやり方もあるよ」と割と論理的に話を進める。食べることに限らず着ること、住むこと、衣食住の基本的価値観(食事、住居、衣服、お金の使い方)を根底から覆えさんばかりの勢いで書かれてあるので、読んでる側はついうろたえるような気分になり、そういう意味ではかなりヘビーな本でもある。究極のストイックな暮らし方の手本といっていいんじゃないかな。
日清のカップヌードルやポテトチップスが定期的に食べたくなる私にはまるで雲の上の人のようだ。

種をまき野菜を育て食べる、このサイクルがいかに大切かとか人ひとりが自分の胃を満たすために必要な農地はそんなに多くはないといった話も出てくる。
土や木々が放つ新鮮な空気と水と魚と動物。これらと遮断されている生活を人類が送るようになってからの歴史は人科の歴史全体の中ではまだ浅くて、自然に囲まれた生活を望む先祖 DNA の叫びが子供に顕著なのかなーなんて思った。

読む人によっては、非現実的なのにSF小説でもないし物語性もないので退屈しきってしまうかもしれない...。
が、不思議なもので読んでいるうちに、森の中で暮らすソローの幸せな満足感が、時を超えて読者を幸せな気持ちにさせる点はこの本の魅力だと思う。
脚注も面白かった。実は友人から土地を借りていたには笑った。


--imported_from
http://www.midore.net/daybook/2008/02/1202012972.html

[2010-02-27]
ソロー語録集
ISBN: 9784892570605 / Henry David Thoreau / 文遊社

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